古本屋の始めかた:神奈川古書組合より

カテゴリ: どんな古本屋をやるのか?

開業にあたって考えておいた方がよさそうなあれこれをネチっこく見てみようというこの連載。
第2回は「ビジネスモデル」です。といってもそんなに小難しい話や奥深い話ではないのですが。
さっそく分けてみましょう。

A.薄利多売
とにかく安く、数を売る、というタイプ。利幅を薄くする、もしくは単価の安いものを売る、のいずれかです。これにはさらに二つあって、
1.大量の在庫を抱えて多く売る
→これにはまず大量の在庫を手に入れる、それを保管する場所を確保する、出荷や販売の人員を確保する、それらにかかるコストで沈まない資金力、などのハードルがあり、最初からできる人はそうそういないと思います。また各種大手と競合するのでなかなか参入が難しいタイプですね。

2.少量の在庫を高速で売る
→こちらはA1に比べると挑戦しやすいタイプではないでしょうか。早く売れる品を安くとも売り、その資金でまた仕入れて早く売る。そのサイクルを回すことで薄利多売を実現する方向性です。
これなら莫大量を仕入れる必要も、広い保管場所を確保する必要もありません。ただし安くしてもなかなか売れないものというのはあるもので、早く売れるものを見極める目は必要でしょうし、売れ筋商品の知識も欠かせません。
とはいえ常に在庫が少ない状態ですので、仕入れを怠ると途端に売るものがなくなってしまいます。この辺りは組合に入って市場を活用できると、買取だけの場合に比べてずいぶん事情が違ってくる点です。

B.厚利少売
こんな言葉はありませんが、要は利幅を厚くするか、単価の高いものを売るかのいずれかです。とはいえ仮に利幅を厚くできても単価が安いと多売の必要が出てくるので、基本は常識的な利幅で単価高め狙いです。
単純化すると同じ利益率でも100円で1日100冊売れる代わりに、1000円で1日10冊売れることを目標にする方向性ですね。この場合、売れ足の速さよりも単価の高い本を見つける知識の方が比重大きくなると思います。
また個人的な感触でしかないのですが、少なくともネットだと単価高めの本は安めの本ほどのスピードでは売れないので、1冊売れるかどうかの影響が大きくなります。100円100冊で10000円が99冊で9900円でも100円差ですが、1000円10冊だと1冊少ないだけで9000円になってしまいます。
これをさらに極端に、1点の単価が100万円なら100円の本の1000分の1の売れ行きでも同等の売り上げなのですが、1点売れるかどうかで100万円の差が出てくるというのはなかなか難しいものです。(余談ですが超高級車なんかはそうそう頻繁に売れない代わりに1台売れると大きな売り上げが立つタイプですね)


とまあ、分けてみましたが実際にはAとBの組み合わせや中間みたいな形でバランスを保ち、リスク分散していくのが無難でもあり、実際に多いところでしょう。ただ特に最初のうちはこの辺りの方針を立てておくと、主に市場で仕入れる場合にどういったものを狙うか決めていきやすくなるはずです。

ちなみに、利幅が厚く単価の高いものをどんどん仕入れられて飛ぶように売れていく、というのは売り上げからすると理想的なのでしょうが、現実はなかなか厳しいものですね?

>第1回はこちら 

ナインブリックスからは以上です。 

開業をする前に、どんな古本屋をやるのかあらためて考えてみることは大切です。「ああしたい、こうしたい」というのはおそらくイメージお持ちの人も多いと思いますが、「やりたい」と「実際にやるとして」とではギャップのあるもの。そのあたりの検討が不十分だったり曖昧だと、スタートしてから大きな見込み違いや思わぬ回り道をする、あるいは中途半端なことになりかねません。
 
そこで、「どんな古本屋をやるのか?」と題して、連載形式で開業前に検討しておいた方がいいポイントを分解整理してみたいと思います。

第1回は基本の基本。営業形態についてです。ようは実店舗を持つかどうかということなのですが、どちらにするかはその後を大きく左右するので、慎重に考えたいところです。

大きく分けて「店舗型」「無店舗型」の2種類です。

■店舗型
お店を構えるタイプです。テナントでも自宅の一部を改装するのでもOKです。無店舗型に比べると以下のような特徴があります。

・持ち込みによる買取が期待できる
 - 無店舗型では宅配買取か出張買取が基本なのですが、そのコストが不要という点は大きなメリットです。
・Amazon出品のような価格競争に巻き込まれにくい
 - お店で並んでいる商品の値段をその場でネットで調べる、という方もいるとは思いますが実際そこまで多数派ではありません。
・物理的な「場所」がある
 - 広さにもよりますが、店舗であればイベントやギャラリー的なスペースを確保することで集客を図ったり、条件を満たせばカフェのような別業種を併設することも可能です。この辺りは店舗という物理的な場所があるからこその強みでしょう。ただしカフェなどを併設する場合は全く異なる内容の仕事を同時にこなす必要があるので、特に最初のうちは一人きりだとどちらも中途半端になりかねません。最初から人を入れるか、古本屋としての仕事に慣れてから手を広げるかするのが無難ではないでしょうか。
・ともかくも値札をつけて店頭に出せば売れるかもしれない
 - ネットでもヤフオクなどで柔軟に売ることはできますが、写真を撮ったり商品情報を入力する手間を考えると、「値札をつけて置いてみる」は非常に手軽です。
・通りを行く人に対してお店自体が宣伝になる
 - 不特定多数の人に対して無料で宣伝ができる、というのは無店舗型ではなかなか難しい話です。
・無店舗型より賃料や光熱費などのランニングコスト、内装や什器などの初期コストがかかる
 -飲食店ほどではないでしょうが、やはり棚やレジ回りなどの設備も必要ですし、無店舗型に比べると立地が重要なので自然と賃料も無店舗型より高くなりがちです。
・営業時間や定休日といった縛りがある
 - やはり商売をするうえで、定休日以外の営業時間はとにかくお店を開けておくのが特に最初のうちは信用を得るうえでも非常に大切でしょう。

また、最近では店舗型でもネット販売を行っているところは少なくありません。
ただその場合、ネット出品しているものと店頭商品とで在庫管理に注意が必要ですね。
店頭商品をネット出品してもいいのですが、知らぬ間に店頭で売れていてネットでの受注時に散々探して結局キャンセル、悪い評価を頂戴する、というのは誰も幸せになりません。かといって両方を完全に分けるのもせっかくの販売チャンネルを半分にするようなものなので、もったいなくはあります。
明確な答えはありませんが、やりながら自分に合ったスタイルを見つけていく必要があるでしょう。

■無店舗型
お店を構えず、ネット専売でやっていくタイプです。事務所を借りても、自宅で営業するのでもOKです。ちなみに私の場合は当初自宅を事務所兼倉庫としていたのですが、途中で本が置ききれなくなり今は事務所を借りています。
店舗型に比べると以下のような特徴があります。

・店舗型より賃料や光熱費などのランニングコスト、内装や什器などの初期コストがかからない
 - 自宅であれば生活家賃と兼用ですし、事務所にしても店舗ほど立地などにこだわる必要がなく、什器などの設備もお店より安く抑えやすいです。ただし古本屋は結構な量と重さの本を持ち運ぶので、2階以上の場合はエレベーターがないとかなり辛いです。
・営業時間や定休日といった縛りが緩い
 - せいぜい、ネット販売なので発送作業をしないといけない、くらいでしょうか。ただし自分なりに意識していないと際限なく働いてしまったり、逆に歯止めなくサボってしまう、ということも。
・持ち込みの買取が期待できない
 - 買取をしたいなら宅配か出張買取を狙うことになります。基本的に売りたい人は検索して探すので、ネット上の大勢の他店と競うことになります。事務所の路面に看板を出し、入りやすい雰囲気で「買い取りセンター」のような形にすればまた違うでしょうが…。
・価格競争にさらされやすい
 - どこへ出品して売るにしろ、同じ商品の検索結果には他店の価格もずらりと並ぶので価格競争が起きやすいです。仮に自分のサイトであっても、よそで安く売っていないか簡単に探せるので、やはり価格比較にさらされやすいです。
・地域特性がない
 - たとえば店舗型で子育て世帯の多い新興住宅地の近くであれば、販売や買取で児童書や絵本など子供向けのものが多くなる、といったことはあります。ただネット専売の場合は商圏が特に限られないため、そういった地域特性の影響受けることはありません。これはパッと聞きメリットのようにも思えますが、「商圏に合わせた商品構成で売れやすくする」といった戦略が取れないというデメリットもあります。


と、ここまで長々と書いてきましたがどうでしょうか? たんに「お店を持つ、持たない」というだけでも色々と考えるポイントがありますね。実際、まだまだ挙げていけばここに書いたこと以外にもあるのですが、キリがないので今回はこれにて。

当連載は
ナインブリックス(http://ok9bricks.com)がお送りする予定です。

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